勝負砂古墳第5次調査 概要報告

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U 調査の成果

 墳頂部トレンチ

 本調査区では、昨年度の調査を継続し、第一に墳丘構造の解明、第二に被覆粘土の検出の二つを目的として掘り下げを行った。
 墳丘の構築過程は、ドーム状盛土構築までの段階と、ドーム状盛土を覆い墳丘を完成させる段階の二つがあることを確認した。第一段階は、埋葬施設構築後、埋葬施設を意識して小単位の粘質土で埋葬施設の周囲を盛る。その後、黒色・黄色・赤色の土を盛り小丘を築き、赤褐色の土でドーム状に覆う。このドーム状盛土はほぼ正円形の平坦面を形成し、その中心がおおよそ墳丘の中心と一致する。これは埋葬施設の位置を意識し、墳丘構築の中途の成形面として意味をもっていたものと考えられる。第二段階は、まずドーム状盛土の周囲に凹凸の激しい青灰色の粘質土を置く。その上に水平を意識して赤色・黄色・黒色の順で土を盛る。この黄色と黒色の盛土の間には、墳丘を囲うように黒褐色の土が墳丘斜面側に帯状に置かれている。最後に、それまでよりも小単位の赤色・黒色・褐色の土を盛り、墳丘を高くしている。
 埋葬施設に関しては、昨年度確認した被覆粘土の東端をおさえるために、南東部の先行トレンチを東に75p拡張した。そのところ、昨年度確認したものと関連する粘質土・角礫を数点検出した。また、セクションを再検討したところ、直接埋葬施設を被覆すると考えられる精良な粘土は、東側には及ばない可能性が考えられた。
 なお、ドーム状盛土を検出する過程において、トレンチ北東部で土層の落ち込みを確認した。精査の結果、これが陥没によるものと確認した。この陥没が埋葬施設に関連するものかどうかは今後の調査課題である。
 また、トレンチトレンチ西端部では、旧表土の可能性のある黒灰色土層を検出し、基盤層の確認のために、トレンチ西端から主軸沿いに東へ5mのタチワリを設定した。掘り下げの結果、この黒灰色土層は盛土であることが判明した。また、西側では標高約29.1m付近で基盤層を確認した。東側では昨年度検出した精良な被覆粘土と一連のものと考えられる粘土を検出した。両者の関係についても来年度の調査課題の一つである。
 出土遺物は土器片・石器片で、全て盛土中からの出土である。墳丘構築の際に混入したものと考えられる。                                                   (水島)








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